中国でトレース管理を実現するために、どのような点に注意が必要でしょうか。実際の工場現場に訪問して感じることは現状の管理方法を直視し、業務運用と共に中国特有の問題点をシステムに折り込み、改善を進めるという点です。
どうしても日本基準で考えてしまいますが、日本と中国との違いを認識した上で、システム化を進めることが必要です。

ここではトレース管理システムを導入する前に中国の現場でよくある現場運用を元に、どのように既存運用を改善するかをご紹介したいと思います。

この記事の目次

離職率の高い中国工場の業務運用の問題点
手作業中心でエラーが多い。入出庫、倉庫の業務運用の問題点
各資料の紐づけ管理が難しい。生産に関する業務運用の問題点

離職率の高い中国工場の業務運用の問題点

入れ替わりの激しい現場運用ルールの徹底の不備

日本では余り考えられないかも知れませんが、中国人の現場スタッフは隣にある別会社の給与が100元(1600円)ていど高くても、現時点の条件を比較して転職を繰り返します。日本では考えられない点ですが、人員の入れ替わりが激しいのが実情です。そのため運用マニュアルを徹底する事は日本以上に難しく、かつ運用の不備を責任者が都度管理する程、時間的な余裕は無いため標準的なルールの徹底が難しいのが中国独自の問題点です。

そのため現場チェック事項に誤りや漏れがある。記載する資料を未記入のまま素通りして運用している。入力はしているものの間違いがあり指摘できていない。運用ルールが面倒であると怠慢になり対応を行わない。転職が多くルールや運用マニュアルなど引き継ぎが行えていない。運用ルールを教える側も転職回数が多いスタッフに対してのレクチャー回数が多くなり対応に当たらない。など中国独自の問題があります。

そのためシステム化は効率化見える化も大切な要素の一つですが、システムを通じて明確な運用ルール化をシステムに作り込み現場運用での必須チェックやミス防止を通じて、正確なトレース管理を実現する必要があります。

転記ミスとリアルタイム化が難しい現場の実績データの共有管理

倉庫や現場で管理資料として在庫一覧生産指示書現品票などを用いて実績数量を現場スタッフが手書きで記入し、記入を終えた資料を事務所側へ半日または一日の単位で手渡して事務所側スタッフが実績データとしてExcelなどの表計算ソフトにて入力を行い実績データとして保管。この実績データをトレースデータとして活用している会社が多いのですが、現場の手書き資料を目視で確認してパソコンへ入力を行うため、データがリアルタイムに反映されず現場で記入された文字は識別が難しく入力ミスや間違いが起きてしまいます。

「現場データ」を二次三次と人の手を介して転記を行うのではなく、QRコードやRFIDなど自動認識技術をうまく活用して現場データをそのまま管理データとして活用すると、入力ミスや間違いが防止され精度の高いトレースデータとして利用が可能となります。

手作業中心でエラーが多い。入出庫、倉庫の業務運用の問題点

手入力が中心の棚台帳を使った在庫管理

中国の倉庫ではよく見かける在庫棚に貼り付けられた「棚台帳」。「棚台帳」とは棚のロケーション別または製品別に棚の柱に「出勤台帳」のような用紙を貼り付けておき、製品を棚入れした日付または棚出しした日付を記入し、棚入れまたは棚出しした数量を記載する用紙です。

もうお分かりかも知れませんが、実物の出し入れ数量と「棚台帳」に記載した出し入れ数量の間違いや記入漏れ、記入ミスなどは管理できず現場任せとなっているため、スタッフの入れ替わりが激しい現場では「なぜ記入作業を行う必要があるのか」「なぜ記入を徹底する必要があるのか」等は現場スタッフに浸透することは難しく、そのため在庫数量の記述と実際の数量が正確に合わないのが実情です。

そのため月に一度で棚卸を行い、原因追求を実施しますが、棚卸処理に時間がかかってしまい、原因の洗い出しに時間が割けないのが実情です。

ピッキング時に目視による確認ミス、ピッキングミス

「出荷リスト (ピッキングリスト)」を元に原料や共通部材、製品などを棚から取り出しを行いますが、同じ製品でも製造されたタイミングで違う棚で保管をしている場合や、先入先出(FIFO)を行う必要もあり特定の棚から棚出しを行う必要があるにも関わらず、違う棚から棚出しを行う、または目視確認のため製品コードが似ている異なる製品を棚出ししてしまう問題があります。

「棚台帳作業」も「出荷ピッキング作業」も出荷ラベルにバーコードやQRコードを印刷して、棚にはQRコード対応の棚ラベルを設置、「出荷リスト (ピッキングリスト)」にもQRコード等を付与して出荷データを連動させてピッキングを行うようにすると、目視によるチェックや記入作業が無くなりヒューマンエラー対策が行え、トレース管理を行うために必要となる現場周りの個体数量の管理精度が格段にあがります。

各資料の紐づけ管理が難しい。生産に関する業務運用の問題点

生産指示書と現品票の紐づけ作業の管理ミス

生産工程では「生産指示書」をベースに製造を工程別に生産することが多いと思いますが、工程で利用する「生産指示書」と「生産現品票(エフ)」と実際にカートや段ボール、絶縁体素材のプラダンに入った「加工品」を確認しながら生産を行います。

この生産指示書を元に生産現品票と加工品のひも付きを行うことで管理したデータをトレースデータとして利用が可能となるのですが、手書きによる管理では紐づけ時のミスが発生し、手書きミスと目視ミスが生じてしまいます。また事務所側へのデータ反映が半日後または翌日などになるため、リアルタイムでトレース状況を確認するのが難しくなります。

生産工程間の現品票の受け渡し管理ミス

製造工程間で加工中の加工品の受け渡しを行う際に、カートには「現品票」を貼り付けて各工程での移動及び、前工程の現品票と現工程の現品票をチェックして受け渡しを行うのですが、受け渡しを行う際は目視チェックであり、チェック後に差し替えた現品票データの反映はリアルタイムではなく、別途手作業での対応となり遅延とミスが生じる可能性があります。

この辺の生産運用もQRコードやRFID等のICタグ等の自動認識技術を利用して部品表(BOM表)の管理からトレース管理をシステム化して精度を上げる必要が求められています。

如何でしたか?現在中国で稼働をしている自社生産の倉庫について思い当たる運用があったのでは無いでしょうか。トレース管理を実現するには既存の倉庫や各工程の管理を整備し直し全体像を元にした改善検討が必要です。弊社は工場の倉庫や生産に関するカイゼンとシステム提案からシステムを実現するハード機器の導入を行っております。中国のトレース管理を実現したいお客様は、お気軽にご相談ください。

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